「アメリカでは就労ビザが必要と聞いたが、具体的にどのようなビザが必要なのか」
「駐在員の派遣や現地での起業には、どのビザが適しているのか」
こうした疑問を持つ方は多いのではないだろうか。アメリカへの駐在員派遣や現地での起業において、ビザの取得は切っても切り離せない重要なトピックである。本記事では、アメリカでの駐在・ビジネス・起業の際に検討すべき代表的な就労ビザを整理し、それぞれの特徴や主なビザ発給要件、どのようなケースで選択されるのかをわかりやすく解説していく。
まず全体像をお伝えするために、アメリカでのビジネス・駐在・起業において最も一般的な就労ビザ(L1ビザ・Eビザ・B1ビザ)の概要を以下の表に整理した。以降のセクションでは、それぞれのビザの詳細や選択時のポイントについて順を追って解説していく。

これからアメリカでのビジネスや起業、駐在員の派遣を検討するにあたり、全体像と考え方を整理するための出発点として本記事をご活用いただきたい。
1. アメリカでの駐在・ビジネス・起業のために取得が必要なビザの種類
まず最初に、アメリカでの駐在・ビジネス・起業にあたって代表的なビザは以下のとおりである。
- L1-Aビザ(重役・管理職向けの駐在員ビザ)
- L1-Bビザ(専門職向けの駐在員ビザ)
- E1ビザ(貿易事業者向けの駐在員ビザ)
- E2ビザ(投資家・起業家向けのビザ)
- その他のビザ(H1Bビザ / B1ビザ / EB-5ビザ)
以下、それぞれについて詳しく解説していく。
L1ビザ(企業内転勤者用のビザ)
Lビザは日本の本社からアメリカの子会社 / 関連会社へ駐在員を派遣する際に利用される、駐在員向けの代表的なビザである。派遣される駐在員の役職や専門知識の有無によって、「L1-Aビザ」と「L1-Bビザ」の2種類に分けられる。以下、それぞれについて詳しく解説していく。
L1-A(重役・管理職向けの駐在員ビザ)
L1-Aビザの概要
L1-Aは重役や管理職クラスの駐在員をアメリカの子会社・関連会社に派遣するためのビザである。また、もしまだアメリカに拠点が存在しない場合にも、新たなアメリカの拠点(子会社・関連会社)を設立・立ち上げる目的で管理職や重役クラスの駐在員を(L1-Aビザを取得させたうえで)派遣することが可能である。
L1-Aビザの主な発給条件
- 過去3年間のうち、派遣元である日本側の会社で継続的に(最低1年以上)勤務したこと
- 駐在先の会社(アメリカ拠点)においても継続して重役・管理職として勤務すること
- 駐在先の会社(アメリカ拠点)にビジネス活動の実態があること
L1-Aビザで滞在可能な期間
原則、最長3年の滞在が認められる。ただし、新規拠点の開設を目的としてアメリカに入国する場合には最長1年までの滞在となる。
また、上記のいずれの場合でも、通算で最長7年に達するまで2年ごとの延長を申請することが可能である(例:3年の滞在後、2年間の延長を2回申請することが可能 / 1年の滞在後は、2年間の延長を3回申請することが可能)。
どのようなケースでL1-Aビザを選択するか
- 日本法人から管理職や役員以上クラスの駐在員をアメリカ現地へ派遣したい場合
- アメリカに新規の拠点を設立する場合で、設立にあたって日本法人の管理職や役員以上クラスの駐在員をアメリカ現地へ派遣したい場合
L1-B(専門職向けの駐在員ビザ)
L1-Bビザの概要
L1-Bビザは、「特定の専門性」を持った従業員をアメリカの子会社・関連会社に派遣するためのビザである。L1-A同様に、もしまだアメリカに拠点が存在しない場合にも、新たなアメリカの拠点(子会社・関連会社)を設立・立ち上げる目的で特定の専門性を持った駐在員を(L1-Bビザを取得させたうえで)派遣することが可能である。
なお、「特定の専門性を持った従業員」というのは “a professional employee with specialized knowledge relating to the organization’s interests” と定義される。専門職として一般に想像されるであろう「エンジニア」や「研究者」に限らず、「その法人の製品やサービス、特定の技術などに関する専門的な知識を持つ」ケースや「その法人特有の業務(プロセス)についての経験や専門的な知識を持つ」ケースにおいて認められる場合もあるようなので、詳しくは移民弁護士に相談されることをおすすめする。
L1-Bビザの主な発給条件
以下、基本的にL1-Aビザの発給要件に同じである。
- 過去3年間のうち、派遣元である日本側の会社で継続的に(最低1年以上)勤務したこと
- 駐在先の会社(アメリカ拠点)においても継続して専門知識を活かしたサービスを提供すること
- 駐在先の会社(アメリカ拠点)にビジネス活動の実態があること
L1-Bビザで滞在可能な期間
原則、最長3年の滞在が認められる。ただし、新規拠点の開設を目的としてアメリカに入国する場合には最長1年までの滞在となる(L1-Aに同じ)。
また、上記のいずれの場合でも、通算で最長5年に達するまで2年ごとの延長を申請することが可能である(例:3年の滞在後、2年間の延長を1回申請することが可能 / 1年の滞在後は、2年間の延長を2回申請することが可能)。
どのようなケースでL1-Bビザを選択するか
- 業務プロセスや特定の技術などに精通している(管理職等の役職者でない)「特定の専門性を持った従業員」をアメリカ現地へ派遣したい場合
Eビザ(貿易・投資家ビザ)
Eビザは、日本とアメリカの間にある通商条約に基づき、貿易や投資を目的としてアメリカでビジネスを行う日本人に発給されるビザである。日米間で一定規模の貿易を行う企業の駐在員向けの「E1ビザ」と、アメリカで事業に投資して経営に関与する投資家向けの「E2ビザ」の2種類に分けられる。以下、それぞれ詳しく解説していく。
E1ビザ(貿易事業者向けの駐在員ビザ)
E1ビザの概要
E1ビザは、日米間で相当量の貿易を継続的におこなう企業の経営や管理、または貿易事業に不可欠な専門業務をおこなうために取得するビザである。物品の輸出入だけでなく、サービス提供や技術移転なども貿易として扱われる。
E1ビザの主な発給条件
E1ビザの発給要件は「会社・事業側の要件」と「駐在員(ビザの発給を受ける者)側の要件」に分けることができる。
会社・事業側の要件
- 日本国籍の企業であること(日本資本が50%以上であること)
- アメリカとの間で実質的な貿易を行っていること
- 貿易の過半数(50%以上)が日米間で行われていること
駐在員(本人)の要件
- 日本国籍であること
- 上記企業の従業員であること
- 以下のいずれかに該当すること
- 管理職・役員クラス
- 事業運営に不可欠な専門知識を持つ人材
E1ビザで滞在可能な期間
注意点としては、「ビザの有効期間」と「アメリカでの滞在・就労許可がおりる期間」は別物であるという点だ。
米国大使館・領事館でE1ビザの交付を受けた場合、ビザ自体は通常5年間有効になる。そして、有効なE1ビザでアメリカに入国すると2年間の滞在と就労許可がおりる形となる。ビザの有効期限内であれば、再入国をする度に2年間の滞在と就労許可が延長されるため(再申請等の手続きは不要)、最長5年間の滞在が可能である。
また、E1ビザの有効期限(= ビザ自体の有効期限)については無期限に5年ごとの延長が可能である。そのため、事業が存続し、かつE1ビザの更新が認められる限りにおいては中長期でのビジネスが可能といえる。ただし、Eビザは非移民ビザであるため、「ビザの滞在期限が過ぎた後にはアメリカから出国する」という意思表示を適宜おこなう必要がある点には注意が必要である。
どのようなケースでE1ビザを選択するか
- 物品の輸出入やサービスの提供を主体とした事業を日米間で展開・拡大したい場合(「事業」の定義については以下のリンク先の “General Qualifications of a Treaty Trader” 内を参照)
E2ビザ(投資家・起業家向けのビザ)
E2ビザの概要
E2ビザは起業家向けの代表的なビザである。具体的には、日本国籍を持つ投資家がアメリカの事業に相当額の資本を投資し、その企業の経営や指揮に関与するために取得するビザである。
E2ビザの主な発給条件
- 日本国籍の投資家であること(企業の場合は日本国籍者が50%以上を所有)
- 実体のある米国事業に対し、相当額かつリスクを伴う投資を行っていること
- 投資家本人が事業の経営・指揮に関与すること(従業員の場合は、管理職または事業に不可欠な専門的スキル・技能を持った者であること)
- 収益性や雇用創出などの観点で、米国経済への大きな貢献が見込まれる事業であること
E2ビザで滞在可能な期間
E1ビザと基本的に同じであるが、以下に再掲させていただく。注意点としては、「ビザの有効期間」と「アメリカでの滞在・就労許可がおりる期間」は別物であるという点だ。
米国大使館・領事館でE2ビザの交付を受けた場合、ビザは通常5年間有効になる。そして、有効なE2ビザでアメリカに入国すると2年間の滞在と就労許可がおりる形となる。ビザの有効期限内であれば、再入国をする度に2年間の滞在と就労許可が自動延長されるため(再申請等の手続きは不要)、最長5年間の滞在が可能である(= ビザの有効期限が切れるまで滞在可能ということ)。
また、E2ビザの有効期限については無期限に5年ごとの延長が可能である。そのため、事業が存続し、かつE2ビザの更新が認められる限りにおいて、中長期でのビジネスが可能といえる。ただし、Eビザは非移民ビザであるため、「ビザの滞在期限が過ぎた後にはアメリカから出国する」という意思表示を適宜おこなう必要がある点には注意が必要である。
どのようなケースでE2ビザを選択するか
- 日本人個人が、自己資金を投資してアメリカで起業したい場合(会社の規模や業種によらない)
- 日本企業や日本人投資家が出資を行い、アメリカで新規事業を立ち上げたい場合
その他のビザ
以下でご紹介する3種類のビザ(H1-B・B1・EB-5)は、いずれもビザの特性上、アメリカ進出や長期のビジネス展開には不向きである(もしくは一般的でない)。一方、その名称を聞く機会が多いビザでもあるため、(ビジネス向けの一般的なビザを漏れなくご紹介する目的で)本セクションにて各々の概要を簡単に整理しておく。
H1-Bビザ(特殊技能職ビザ)
米国企業が外国人を専門職として雇用するためのビザである。延長も含めて最長6年の就労が可能であるため、米国の大学を卒業した外国人留学生がまず取得を目指す、一般的な就労ビザの一つである。しかし、もしH1-Bビザの発給要件を満たしたとしても、実際に取得できるかどうかはランダムな抽選で決まるため(当選確率は近年15%程度とも言われる)、計画的なアメリカ進出や駐在員の派遣には不向きである。
B1ビザ(短期商用ビザ)
短期の商談や市場調査など、就労を伴わないビジネス活動に利用されるビザである。「就労を伴わないという活動」という性質上、B1ビザの代わりにESTAを利用することも可能であるが、滞在が90日を超える場合にはB1ビザの申請が必要になる。なお、短期の出張などで滞在期間が90日以内で済む場合には、B1ビザではなくESTAを申請した方が余分なコストがかからず、申請手続きも簡単である。いずれにせよ、就労することや投資活動などを行うことができないため、本格的なアメリカ進出や駐在員の派遣には不向きである。
なお、B1ビザと混同されがちな「B2ビザ」は観光ビザとも呼ばれ、短期の旅行や親族の訪問などを目的にアメリカに90日以上滞在する際、申請が必要になるビザである。
EB-5ビザ(投資永住権)
EB-5ビザは、一定額以上の資金を米国の事業に投資し、雇用創出などの要件を満たすことで永住権(グリーンカード)の取得を目指す投資家向けの制度である。これにより、アメリカでの就労や起業など、自由なビジネス活動が可能となる。
ただし、現在は原則として80万ドル(日本円で1億円程度)以上の投資が必要とされており、求められる投資額が大きく、手続きも複雑で時間を要する。そのため、一般企業のアメリカ進出や一般的な起業目的で選択されるケースは多くない。
2. アメリカ進出時のビジネス・就労ビザの選び方
アメリカで利用できるビジネス関連のビザはいくつか存在するが、実務上よく検討されるのはLビザ(駐在員向け)とEビザ(貿易・投資向け)の2つである。シチュエーション別に選択可能なビザを整理したので、参考にしてみてほしい。


3. まとめ
本記事では、アメリカでのビジネスや駐在員の派遣、現地での起業に関係する代表的なビザの種類を整理し、それぞれの特徴や主な発給要件、どのようなケースで取得するのか?という点をそれぞれ解説してきた。進出形態や株主(出資者)の構成、誰を現地に派遣するのかといった前提条件によって、どのビザが最適なのかは大きく変わる。自社のシチュエーションに照らし合わせながら慎重に検討されることをお勧めする。
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