「アメリカで会社を作るなら、法人税が安い州はどこなのか」
「州によってどれくらい税率が違うのか?日本の制度との違いは?」
こうした疑問を持つ方は少なくない。アメリカでは連邦税に加えて州税が課されるため、どの州で会社を設立・事業展開するかによって法人税の実効税率(= 実質的に負担するトータルの税率)が変わってくる。日本においても国税に加えて地方税が存在し、地方自治体によって若干の差は生じるが、基本的な税体系や税率水準は全国で大きくは変わらない。一方、アメリカでは州ごとに税制そのものが異なり、法人税(法人所得税)が存在しない州もあれば、比較的高い税率を設定している州もある。この点が日本の制度との大きな違いであると言える。
本記事では、州ごとの税制の違いに着目し、法人税(法人所得税)負担という観点から見た州選びの考え方と注意点をわかりやすく解説していく。
アメリカ法人所得税の基本構造
まず最初に、アメリカにおける法人税(法人所得税)の制度について簡単にご紹介する。アメリカの法人税は大きく分けて連邦レベルの税金と州ごとに課される税金の二層構造になっている。連邦法人所得税の税率は現在一律21%であるが、州レベルの税率については州ごとに制度や税率が大きく異なる。州によっては法人所得税そのものが存在しないところもあれば(テキサス州、ネバダ州など)、比較的高い税率を設定している州もあるため(ニューヨーク州、カリフォルニア州など)、注意が必要である。

アメリカで法人税(法人所得税)が安い州
税金の負担が軽い州として一般的に注目されるのは、州レベルで法人所得税が課されない州である。代表的な州としては、ネバダ州、ワイオミング州、サウスダコタ州などが挙げられる。これらの州では州法人所得税そのものが存在しないため、単純に所得税率だけを比較すると有利に「見える」ことが多い。
州レベルの法人所得税が存在しない州(2026年2月時点)
- ネバダ州(Nevada)
- ワイオミング州(Wyoming)
- サウスダコタ州(South Dakota)
- テキサス州(Texas)
- ワシントン州(Washington)
- オハイオ州(Ohio)
また、法人所得税率の比較的低い代表的な州は以下のとおりである。これらの州も単純に所得税率だけを比較すると有利に「見える」。
法人所得税率の低い州の代表例(2026年2月時点)
- コロラド州(Colorado)
- フロリダ州(Florida)
- ミズーリ州(Missouri)
- ノースカロライナ州(North Carolina)
- オクラホマ州(Oklahoma)
- サウスカロライナ州(South Carolina)
- ユタ州(Utah)
以上、あえて「見える」と申し上げてきたのには理由がある。この点については次のセクションで詳しく解説していく。
「法人税(法人所得税)」だけをみて州を選ぶのは危険!
税金の負担をできる限り小さくしたい場合、もっとも注意すべきことは「法人所得税がない州 ≠ 州税の負担がゼロ」という点である。州によっては(法人所得税の代わりに)別の形で税金が課されることがある。代表的なものとしては「フランチャイズ・タックス」や州内の売上に対して課せられる「総売上税」などがある。たとえばテキサス州では法人所得税が存在しない。しかしその代わりに、総収入(正確には、粗利)に基づく「フランチャイズ・タックス」が課される仕組みになっている。また、ワシントン州においても法人所得税は課されないものの、総収入に対して課されるB&O税(Business and Occupation tax)が存在する。
このように、利益(総収入 – 経費)以外の指標をベースとした課税が行われる州もある。それゆえに「法人所得税」の有無だけで税金負担を単純比較するのは避けるべきである。
それでも法人所得税の影響は大きい
もっとも、ここまで注意を促してきたものの、実務上の傾向としては「フランチャイズ・タックス」や「総売上税」には小規模事業者への免除があったり、比較的低い税率で設定されていたりすることが多く、利益に対して課される法人所得税の方が税負担の大きくなるケースが多い。そのため、利益が安定して出ている企業にとっては法人所得税率の違い(法人所得税の有無)が実効税率に与える影響は依然として大きいといえる。この辺りはビジネスモデルや事業計画によってケースバイケースであるので、米国税務に詳しい会計士や税理士に相談し、税金負担のシミュレーションを実施しておくと安心である。
まとめ:その州の州税が「安い」のかどうかは、総合的に判断
州税を比較する際には、単純に法人所得税の有無だけを見るのではなく、1)法人所得税の有無や税率、2)フランチャイズ・タックスや総収入ベースの税、ミニマム・タックスの有無、3)州政府へのAnnual Registration費用などの維持・管理コスト、といった複数の要素を総合的に整理していくことをおすすめする。州税の制度はビジネスの規模や事業形態によってケースバイケースであるため、設立州を検討する際には各州の税制にもアンテナを張りつつ、総合的に判断していくことが重要である。
コメント
この記事へのコメントはありません。